「雪の日は、歩いているあいだずっと、首をすくめているんです。家に着いたら、肩が耳についたままで」。冬になると、カウンセリングでよく聞く言葉です。
帯広の冬は、寒いだけではありません。凍った歩道では、転ばないように下を向き、肩をすぼめ、小さな歩幅で進む。そのあいだ首は、ほとんど動いていません。雪が積もる前のいまのうちに、この姿勢の話をしておきたいと思います。
外に出た瞬間から、体は縮こまる
気象庁の平年値(一九九一〜二〇二〇年)を見ると、帯広の一月は、平均気温がマイナス六・九度、日最低気温の平均がマイナス十三度です。外に出たとたんに体が縮むのは、無理もありません。
寒いと、人は無意識に肩を上げ、首をすくめます。そこへ雪道で下を向く姿勢と、ポケットに入れた手が重なる。通勤の十分、買いものの十分、その姿勢のままで過ごしています。
- 外から帰ると、肩が上がったまま下りてこない
- マフラーをはずすと、首のうしろがほっとする
- 夕方、後頭部から目の奥にかけて重くなる
- ふり向くと、首の片側がつっぱる
同じ姿勢が続くと、筋肉は疲れて固くなる
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、姿勢を保つための筋肉(抗重力筋)について、同じ姿勢を長く続けると疲労や収縮が進むと説明されています。首や肩は、頭の重みを支える場所でもあります。
寒い季節は、縮こまっている時間が長くなります。そのぶん、首まわりの筋肉が休める時間は短くなる。「冬のほうが肩がつらい」と感じるのは、気のせいではないのかもしれません。
東洋医学は、首のうしろを冷えの入り口と見る
東洋医学では、寒さを寒邪(かんじゃ)と呼びます。寒邪は体を縮こまらせ、気や血のめぐりをとどこおらせやすいと考えます。なかでも首のうしろ(うなじ)は、外の冷えが入りやすい場所とされてきました。
寒さで縮こまり、そのまま力が抜けない。気のめぐりが滞りやすい状態を、東洋医学では気滞(きたい)と呼びます。診断ではなく、いまの自分がどちらへ傾いているかを、ゆるく知っておくための見方です。
今日からできる、三つのこと
一、うなじを覆ってから、玄関を出る
マフラーでも、タートルでも、薄いストールでもかまいません。首のうしろを先に覆ってから外に出る。それだけで、肩の上がり方が変わる日があります。
二、信号待ちのたびに、肩を一度落とす
肩を耳に近づけて、すとんと落とす。吐く息と一緒に、一回だけ。歩く途中の信号待ちは、体の力を抜くのにちょうどいい時間です。
三、帰ったら、ぬるめのタオルを首のうしろに
ぬるめのお湯で絞ったタオルを、首のうしろに数分あてておく。熱すぎるとやけどのもとになるので、手で持って心地よいくらいで十分です。
※東洋医学の考え方にもとづく一般的な養生のご紹介です。医療的な診断・治療や、効果を保証するものではありません。腕や手にしびれが出る、急に強い痛みが出た、頭痛や吐き気をともなう場合は、医療機関にご相談ください。
首のうしろは、自分では見えない
首のうしろは、鏡でも見えません。さわっても、比べる相手は昨日の自分だけ。施術の前に首のうしろにふれると、板のように固くなっている方がいます。ご本人は「ふつうです」とおっしゃる。それくらい、固さに慣れてしまうものです。
香の雫では、施術の前にその日の体調とお好みをうかがって、四種の漢方アロマから香りをお選びします。さらっとした質感の漢方アロマオイルを頭皮になじませながら、後頭部、首すじ、肩のつけ根まで、ゆっくり手を動かしていきます。シャンプー台は使わず髪も洗いませんので、施術のあとはそのままお出かけいただけます。
雪が積もる前の、いまの時期。首のうしろがいまどうなっているか、一度だけ見ておく。そのくらいの気持ちで、ちょうどいいと思っています。