「自分でも、もんではいるんです。でも、そのときだけなんですよね」。カウンセリングでいちばんよく伺うのが、この一言です。テレビを見ながらこめかみを押す。仕事の合間に、後頭部のくぼみを親指で押し上げる。皆さん、ちゃんとやっていらっしゃいます。
それなのに、手を離すと十分もしないうちに元に戻る。だんだん強く押すようになって、翌日、押したところが痛い。心当たりのある方は、少なくないと思います。
押しているあいだ、どこに力が入っているか
一度、いつもの姿勢で頭に手をやってみてください。そのまま、肩の位置を確かめます。上がっていませんか。ひじは体から離れて、宙に浮いていませんか。
自分の頭に手を届かせるには、腕を上げ続けなければなりません。腕を上げていれば、肩と首すじには力が入ります。つまり私たちは、頭をゆるめようとしながら、その真下をずっと固めている。押している数分のあいだ、首と肩は一度も休んでいないのです。
- 押しているあいだだけ楽で、離すとすぐ戻る
- だんだん力が強くなっていく
- 翌日、押したところが痛い
- 気づくと、考えごとをしながら押している
東洋医学は、頭・首・肩をひとつづきで見る
東洋医学に「気滞(きたい)」という考え方があります。体をめぐる「気」の量は足りているのに、流れが渋っている状態のことです。考えすぎ、緊張、こらえた感情が続くと、そうなりやすいとされています。
そして、その滞りがもっとも現れやすい場所とされるのが、頭・首・肩です。三つはひとつづき。どこか一か所だけをどうにかしようとしても、ほかの二つが張ったままなら、また戻ってしまいます。
さきほどの箇条書きに「考えごとをしながら押している」と入れたのには、理由があります。テレビの内容、明日の予定、気がかりなこと。手はほぐしていても、頭のなかは動き続けている。滞りのもとになるとされるものを片方でつくりながら、もう片方でほどこうとしている格好です。
今日からできる、三つの見直し
一、強さではなく、抜く時間をつくる
香の雫の施術では、四つ数えながら圧をかけ、四つ数えながら抜いていきます。圧をかけることより、抜き方のほうを丁寧にする。急に離すと、体は驚いて縮こまるからです。ご自分でされるときも、押している時間と同じだけ、離していく時間をとってみてください。
二、ひじを、どこかに預ける
テーブルにひじをつく。ひじの下にクッションを置く。腕の重さを自分で支えないというだけで、肩と首すじの力は変わります。頭にふれる前に、まず腕を軽くしておく。
三、頭にふれる前に、足首を回す
遠回りに思われるかもしれません。ただ、体の下のほうが固まったままで、上だけがゆるむということは起こりにくい。椅子に座ったまま、足首を左右十回ずつ。それから頭に手をやると、感じ方が違うことがあります。
※東洋医学の考え方にもとづく一般的な養生のご紹介です。医療的な診断・治療や、効果を保証するものではありません。頭の重さや痛みが続く場合、また急に強くなった場合は、医療機関にご相談ください。
自分では、力が抜けきらない
それでも、限界はあります。自分の手は、自分で動かしている。次にどこを押すかを自分で決めているかぎり、体は「これから来る」と身構えたままです。人にゆだねているときの、あの落ち方にはなりません。
香の雫の施術は、頭から始めません。すね、ふくらはぎ、腕、首すじ、肩とたどってから、ようやく頭皮、後頭部、側頭部、耳のまわりへ進みます。順番そのものが、いま申し上げたことの裏返しになっています。
さらっとした質感の漢方アロマオイルを頭皮になじませながら、ゆっくり手を動かしていきます。シャンプー台は使わず髪も洗いませんので、施術のあとはそのままお出かけいただけます。
照明を落とした完全個室で、会話は最小限に。腕を上げずに済む時間を、意図してつくっておく。それだけのことです。