施術で側頭部にふれると、はっきり硬い方がいます。こめかみから耳の上にかけて、板が入っているような手ざわりです。そういう方に「日中、歯を食いしばっていませんか」とうかがうと、たいてい心当たりがあると返ってきます。
食いしばりというと、寝ているあいだの歯ぎしりを思い浮かべる方が多いのですが、やっかいなのは起きているあいだのほうです。本人に自覚がないまま、何時間も続いていることがあります。
上下の歯は、本来ほとんど触れていない
口を閉じているとき、上下の歯は触れていないのがふつうの状態だと言われます。歯と歯のあいだに、わずかなすき間があるのが本来の位置。上下が触れるのは、噛むときと飲みこむときくらいで、一日を通しても合計はごく短い、と歯科では説明されます。
この、無意識に上下の歯を触れさせ続けてしまう癖には、歯科でつけられた名前があります。TCH(歯列接触癖/Tooth Contacting Habit)といいます。痛みではなく「癖」として扱われるので、自分では気づきにくいのが特徴です。
ところが、集中しているとき、緊張しているとき、痛みをこらえているときに、人は無意識に噛みしめます。パソコンの画面を見つめているとき。車を運転しているとき。スマートフォンを操作しているとき。力を入れているつもりはないのに、上下の歯が触れたままになっている。
ふれているだけでも、あごを動かす筋肉は働き続けます。そしてその筋肉のひとつが、こめかみから耳の上に広がっています。側頭筋です。
こめかみが硬いと、頭が重く感じやすい
側頭筋は、頭の横側をおおうように広がっている筋肉です。ここが長時間はたらき続けると、こめかみのあたりが張ってきます。「頭が重い」「締めつけられる感じがする」という言い方をされる方が多い場所でもあります。
首や肩のこりは自覚しやすいのに、こめかみの張りは見過ごされがちです。肩はもんでも、こめかみをもむ習慣のある方はあまりいません。
かんたんなセルフチェック
- こめかみに指をあてて、噛むまねをすると、動く場所がある
- そこを押すと、じんわり痛い・気持ちいい
- 朝起きたとき、あごがだるい
- 頬の内側や舌のふちに、歯のあとがついている
- 集中していたときのことを思い返すと、歯が触れていた
いくつか当てはまったからといって、何かの病気というわけではありません。ただ、体のどこかに力が入りっぱなしになっているサインとしては、わかりやすいものです。
今日からできる、「歯を離す」だけの習慣
対処はとても単純です。上下の歯を離す。ただそれだけです。
難しいのは、気づくことのほうです。そこで、目印を決めてしまうのがおすすめです。付箋を一枚、パソコンの画面のふちに貼る。スマートフォンの待ち受けを変える。目に入るたびに、歯が触れていないかを確かめて、触れていたら離して、肩の力を抜く。
一度で直るものではありません。何日か続けているうちに、「あ、また噛んでいた」と気づく回数が増えてきます。気づけるようになれば、半分は進んでいます。
こめかみを、自分でゆるめるなら
指の腹をこめかみにあてて、円を描くようにゆっくり動かします。強く押す必要はありません。あごの力を抜いた状態で、口をすこし開けたままにすると、ゆるみやすくなります。お風呂のなかや、寝る前の一、二分で十分です。
自分ではさわりにくい場所でもある
こめかみは自分でさわれますが、耳のうしろから後頭部の付け根にかけては、自分の指では角度が取りにくい場所です。力の入れ方もどうしても偏ります。
香の雫では、脚、首、肩とゆるめてから、頭皮、側頭部、耳のまわりへと順にたどっていきます。食いしばりのくせがある方は、側頭部にさしかかったあたりで、ふっと表情がゆるむことが多いように思います。
※本ページの内容は一般的な情報のご紹介です。あごの痛み・開けにくさ・強い頭痛が続く場合は、歯科・口腔外科や医療機関にご相談ください。